二次創作字書きがあらすじ作るって結構いいよ
わたしは自分で書いた二次創作小説のあらすじを作るのが好きなオタクだ。
正確には自分で書いた二次創作小説を「ちょっとこれを読んでみてくれ!」と世界のどこかにいるかもしれない同好者に向けて発表するまでの一連が趣味の字書きである。あらすじを作るのもその過程の一つだという話なのだが、あらすじ作りが好きと言うと「あらすじ作るの苦手で…」「『○○が××する話』以外のあらすじの書き方が分からん」ということをよく言われる。気持ちは分かる。とてもよく分かる…!
なので自己流ではあるがあらすじの書き方等を以下にまとめた。あらすじを作りたい誰かの役に立ったら幸いだ。
- step1. あらすじ何を書く?
- step2. あらすじどこを書く?
- step3. あらすじどう書く?
- step4. あらすじ実際書いてみよう。
- step.5 【初稿】いざあらすじ書いてみよう。
- step6. 【第2稿】あらすじ修正しよう。
- step7. 【第3稿】あらすじメインとサブストーリーで分けよう。
- step8. あらすじ完成。
- step9. あらすじ作るとどうなる?
- step10. 二次創作字書きがあらすじ作るって結構いいよまとめ
step1. あらすじ何を書く?
あらすじには読み手を惹きつける「フック」が必要だ。具体的には以下4つのフックを書いてみよう。
設定
事件の概要、舞台、既に何が起こっているか →読み手の中に「なぜ?」を作る世界観の紹介、多すぎると設定資料集に。
展開
設定からスタートして登場人物たちが何を行い、新たに何が起こったのか →読み手が登場人物と共に経験していく出来事、期待や興奮の出所で煽りとなる。
サブストーリー
メインの事件と同時進行している他のストーリー(カップリング等) →とはいえカップリングの場合、2つのメインストーリーとして扱うのが主。
作風
目止まりになる本文の引用、強いセリフ →時に文体やセリフのセンスは、読み手にとって物語の展開より重要なことも。
あらすじ作りのメイン作業、この4つを自分の小説から探しだそう。
step2. あらすじどこを書く?
小説本文の中でどこまでをあらすじに盛り込むか。あらすじは「読んでみたい!」を駆り立てるツールだ。臆せずミッドポイントまで書こう。ミッドポイントは転換点、読み手が最も続きを欲しがる位置だ。
step3. あらすじどう書く?
現代のオタク忙しくてあらすじ読んでる暇がない。とにかくコンパクトに書こう。
センテンス
短文を繋げてコンパクトにテンポよく →より短い言葉への言い回し、接続詞はここぞの強調以外は削る、等。
文字数
目標200字前後 →ぱっと見で全容を理解できる程度のボリューム感が理想だ。
step4. あらすじ実際書いてみよう。
以降は実際にわたしが発行した直近同人誌のあらすじ、その推敲過程を具体例として取り扱う。
今回あらすじを作った話について
- 二次創作小説同人誌
- 事件解決物
- カップリング表現あり
- R18
- 本文20万字前後予定
- サンプル9万字、pixivに掲載
今回あらすじを作ったタイミング
- プロット完成済み
- 本文2万字完成時点、以降18万字(予定)は白紙
- 外部サービスに帯を依頼する前
- ウェブオンリーの展示が近付いたとき
step.5 【初稿】いざあらすじ書いてみよう。
北の国で孤児が次々行方不明になっている――魔法舎に新たな依頼が届いた。調査に赴く北と東の魔法使いたちを待ち受けていたのは、介入を拒む大人たちだった。
その村はかつて死の盗賊団が奪い尽くし、そして潰した村だった。400年前も村から子供が消えていた。あのときと同じことが同じ村でまた起こっているのだろうか。400年前の不始末が今、子供を行方不明にしているのだろうか。
時同じくして西の国で発見された大量の子供の人骨。そして消えた孤児の一人が発見されたとき、事件は大きく動き出す。
村には一体何が隠されているのか。すべての事件につながりはあるのか。
ネロとブラッドリー、賢者の魔法使いたち、人間、そして――それぞれの思惑が交差した瞬間、一つのおぞましい計画が浮かび上がる。悔やんでも恨んでも恋い焦がれても諦めても、どれだけ時間が流れても、過去と地続きの今を生きるしかないネロとブラッドリーの、愛と道理の情熱譚。
うーん、分かりにくい。とにかく長い。書きたいこと、書いておいた方がいいかなと思うこと、なんとなく入れたこと、等が時系列含めて全く整理されない状態でダラダラ書かれていて、何が言いたいのか、どんな話なのか分からない。これでは本文に飛ぶどころか、あらすじの時点で目が滑って流されてしまう。step1.2.3にのっとって改善していこう。
【初稿】改善点
- 長くて読みにくい(398字もある)。
- 4つのフックがごちゃまぜ。
- 4つのフックの各ボリュームに一貫性がない(【設定】が多く【展開】が少ない)。
- メインストーリー(事件)とサブストーリー(カップリング)が考えなしに混ざっている。
step6. 【第2稿】あらすじ修正しよう。
北の国のとある村で次々行方不明になる孤児たち――依頼を受けた北と東の魔法使いたちを待ち受けていたのは、介入を拒む大人たちだった。
そこはかつて死の盗賊団が奪い尽くして潰した村。ネロとブラッドリーは、かつての記憶を共有しながらも賢者の魔法使いとして、それぞれの思惑を胸に動く。
時同じくして西の国で発見された大量の子供の人骨。そして消えた孤児の一人が発見されたとき、事件は大きく動き出し、400年越しのおぞましい計画が浮かび上がる。悔やんでも恨んでも恋い焦がれても諦めても、全てを捨てても失っても、過去と地続きの今を生きるしかないネロとブラッドリーの、愛と途方の情熱譚。
いくらかすっきりしたがまだ整理しきれていない。改善の余地を探していこう。
【第2稿】改善点
- まだ長い(282字)。
- 【設定】と【展開】がうまく流れていない。
- 最後に入った【サブストーリー(カップリング)】があまりに唐突。
step7. 【第3稿】あらすじメインとサブストーリーで分けよう。
カップリング小説の場合、メインの事件とサブのカップリングは両方メインストーリー級。何度手を入れてもとっちらかるなら、2つのメインストーリーとして事件とカップリングであらすじも分けてしまうことにしよう。
メインストーリーあらすじ
北の国のとある村で次々行方不明になる孤児たち――依頼を受けた北と東の魔法使いたちを待ち受けていたのは、介入を拒む大人たちだった。
時同じくして西の国で発見された大量の子供の人骨。そして消えた孤児の一人が発見されたとき、事件は大きく動き出し、400年越しのおぞましい計画が浮かび上がる。
サブストーリー(カップリング)あらすじ
400年前も村から子供が消えていた。あのときと同じことが同じ村でまた起こっているのだろうか。400年前のネロの不始末が今、再び子供を行方不明にしているのだろうか。
ネロとブラッドリーは、かつての記憶を共有しながらも、今はお互いに「賢者の魔法使い」として、けれどそれぞれの思惑を胸に動く。
悔やんでも恨んでも恋い焦がれても諦めても、全てを捨てても失っても、過去と地続きの今を生きるしかないネロとブラッドリーの、愛と途方の情熱譚。
step8. あらすじ完成。
諸々体裁を整えた完成形がこれだ。
あらすじ改めて整理すると…。
メインストーリーのあらすじ143字、サブストーリー(カップリング)のあらすじ211字で完成となった。4つのフックの各ボリュームはほぼ等分になったかと思う。
- 設定 :北の国のとある村で次々行方不明になる孤児たち/400年前も村から子供が消えていた/400年前のネロの不始末
- 展開 :依頼を受けた北と東の魔法使いたちを待ち受けていたのは、介入を拒む大人たち/時同じくして西の国で発見された大量の子供の人骨/消えた孤児の一人が発見/400年越しのおぞましい計画が浮かび上がる。
- サブストーリー :ネロとブラッドリーは、かつての記憶を共有しながらも、今はお互いに「賢者の魔法使い」として、けれどそれぞれの思惑を胸に動く。
- 作風 :俺はまた、この男を裏切るんだろうか/この男からは今もなお、ネロが捨てた北の国の氷雪と血と暴力の匂いがする/ネロ、お前はもう、俺とは行かねえんだろ?
構成上のテクニックいくつか
「なぜ?」を作る
依頼されて来たのに介入を拒む? 孤児が行方不明になって西の国で子供の人骨が見つかったの? 400年越しってなに?→答えを知りたいと思わせる
メイン・サブストーリーの融合
[メイン]あのときと同じことが同じ村でまた起こっている[サブ]俺はまた裏切るんだろうか→「また」の対比、重なる構成
本編のテーマを盛り込む
テーマ「不変と変容」[不変]この男からは今もなお[変容]お前はもう→あらすじで空気感をすり込んでおく
step9. あらすじ作るとどうなる?
わたしは以下3つのメリットがあると考えている。
1.告知力が上がる
「読んでみたい!」はクリックへの入り口。二次創作の発表の場は多様化し、書き手も読み手も多く「ちょっとこれを読んでみてくれ!」と言うのはとても簡単になった。反面、たくさんの「ちょっとこれを読んでみてくれ!」に埋もれ、自分の声をどこかにいるかもしれない同好者に届けにくくなっているのも事実。特に小説は同じ明朝体の羅列でぱっと見では差別化がしにくい。クリックして一行目を読ませるのが大事。あらすじは、そのクリックを後押しするのに一役買ってくれるだろう。
2.大元の小説がもっとよくなる
自己との対話だけが上達の鍵。ちゃんとしたあらすじを作るには自分が書いたストーリーときちんと向き合わなければならない。何がポイントでどこで転換しているのか。読み手を熱狂させる仕掛けができているか。この小説が読みたいと思うのはどこからか。それを自分で徹底的に考える必要がある。考えているうちに、手元の小説に足りない部分や弱い部分=改善点も見えてくるだろう。あらすじから本作にフィードバックする。あらすじのある小説はきっともっと面白くなれる。
3.プレゼンに役立つ
伝えたいことは全部あらすじにおいてきた。絵師さんに表紙絵をお願いする、デザインを依頼する、タイトルを考えてもらう、帯を作ってもらう…同人活動は自分以外の作り手と一緒に物を作る機会もある。「どんな小説ですか?」という話になったとき、サンプルも大事だが、小説から意図を汲み取ってもらうのは至難の業だし、相手に負担もかかる。その点、自分できちんと考え、必要なものを選出し、内容を凝縮させた「あらすじ」は何にも勝るプレゼン資料になる。
step10. 二次創作字書きがあらすじ作るって結構いいよまとめ
ここまでまとめてなんだが、あらすじは、作るには時間がかかるし面倒だし考えることも多いし難しくて大変だ。実際わたしもちょっと前までは「○○が××する話」というあらすじを量産していた。何なら今も時間がないとそうなる。けれど、労力を注いだだけのリターンは十分にあるとも思っている。そして作った分だけ上達する。これは間違いないと思う。
人の心に届くあらすじを作れたら楽しいし「あらすじ読んで興味湧きました!」と言ってもらえたらうれしい。それで小説を読んで、あまつさえ楽しんでもらえたらとても幸せ。その気持ちが共有できたらうれしいし、あらすじを作ってみたい誰かの足がかりになれたらいいなと思う。そしてあなたの書いた小説を読んで楽しんでくれる人が一人でも増えたら、それはやっぱり幸せなことだと思うのだ。
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二次創作字書きがあらすじ作るって結構いいよまとめ。 pic.twitter.com/8m9pBkzAXk
— ミオ🌸 (@hanamio3) 2022年5月17日